「こんばんは。」
「いらっしゃい、1か月ぶりね。」
裕二はバーに1人で行った。
叱られる姿はあまり響子ちゃんに見られたくないので、今日は1人で来た。
「1ヵ月の支出をつけてみてどうだった?」
ママは裕二に聞いた。
「はい、生きていくって大変ですね。とりあえず固定費の見直しとして携帯電話に着手しました。最初携帯ショップに行ってオプションを外したんですけど、その後響子ちゃんに格安SIMにしたら、と言われて。おかげでさらに携帯電話の固定費を下げることができて、月5000円は積み立ての上積みが可能になりました。あと、残業手当は最初からなかったものとして別口座に入れることにしました。」
「すごいわね。そこまでできるようになったらたいしたものだわ。」
ママが褒めてくれた!
裕二はすごく嬉しかった。
「私もね、若い頃残業手当を当てにしてたの。そうしたら私の友人が、残業手当はどうしても当てにしてしまうから、もらえた時はなかったものとして別に貯金しておくと言ってたの。それから私もそうするようにしたわ。」
「へえ。ママでも初めは当てにしてたんですね。」
最初から完璧にお金が貯められる人っていないのかもな。
「私は、息子が生まれてからほとんど残業ができなくなったのよね。育休明けてから手取りはすごく減ったの。保育所に迎えに行かなきゃいけないでしょ。残業なんかする暇なくて。だけど残業手当を当てにして暮らしてなかったから、なくても困らなかった。残業手当分は貯金をしてたおかげね。」
「はい、当てにしてると、少ない時が苦しくなりますしね。しかも今は働き方改革でなるべく残業しないように会社も言ってるから、あんまり残業つけられないんですよ。」
「時代は変わったわね。」
「ところで、結局現金はいくらぐらい貯めればいいんですか。結納金分ですかね。100万円?」
裕二がそもそも貯金を始めたいと思った理由は、お金がないと結納金も払えず響子ちゃんと結婚できないというネガティブ感情からだった。
「本当はね、結納金よりも、まず給料の3ヶ月分を現金で持っていて欲しいと思ったのよね。」
ママは言った。
「なんで3ヶ月分なんですか。」