「たまたまね、息子と同じ年の男性がお客様で来ててね。お金の知識がなくて、ひやひやするのよ。つい叱っちゃうのよね。」
「放っておけないよね。」
「そう。好きな子と結婚できないわよと脅して、貯金させてるの。」
ああ、お金を貯めると言っている彼がいる、って言っていたママのお客、この人のことか、とシロさんは思い当たった。
「きっとママの指導と彼女の伴走で貯められるようになるわよ。」
「そうだといいけどね。」
ママは裕二のことを思い出していた。
さて、1か月の支出をメモしまくる裕二であったが、メモをするだけで、支出の抑制意識が出てくる。
もしかして測るだけダイエットが効果があるってこういうことかと理由がわかってきた。
たぶん、毎日体重計に乗ることで、増えたくない!という意識が高まるのだろう。
支出も、書き留めることで増やしたくないという意識が湧き出てくる。
ただ、響子ちゃんからは、支出を減らしたいばかりに食事を抜いたり、メニューが貧相になったりしないようアドバイスをもらった。
また、Google keepに入力する時も、最初に食費、雑費という項目別にラベルを作り、入力すると見返す時も便利だと言われてそうしてる。
しかし食事だけはどうにもならない。作りたくないから。
「僕、実家に戻ろうかな。」
もともと裕二の実家は博多区にあり、実家から職場に通おうと思えば通えるのだが、一人暮らしをしたことがなかったので、就職と同時にアパートを借りたのである。
占い通り、裕二は極端な行動に出ようとしていた。
「えっ裕二戻ってくるの?何かあったの?」
母さんに電話をしたら、すごく驚かれた。
「何もないけど、金がたまらなくて。」
「お金無いの?ますます何かあったのか心配なんだけど。」
「別に何もない。お金を貯めたいだけ。」
「なんでよ。貯めるのはいいことだけど。」
「ああ、えっと、け、結婚・・・」
「えっ結婚?お父さんお父さん!!」
母さんは電話口で騒ぎはじめ、親父を呼んでいた。
「お父さん、裕二が結婚するって。」
どうしてそうなるんだろう。まだするとか何も言ってない。
「もしもし、裕二。」
親父だ。
「お母さん、全然話聞いてくれないんだけど。まだ全然先なんだけど、お金貯めないと結婚できないだろ?だから実家帰ろうかと思って。」
「裕二、そりゃ実家に帰れば家賃もいらんからその分貯まるだろうが・・・。」
親父は声をひそめて
「女の子家に呼べんだろ。そのまま一人暮らししとけ。」
とありがたいアドバイスをくれた。確かに・・・。
電話を切った後、裕二の父は、母に向かって
「結婚に向けて金を貯めたいらしい。だが、一人暮らしは続けろと言っておいた。」
「え、なんで。」
「実家に甘えず、金を貯めろってな。」
裕二は次男なので、母さんはものすごく可愛がっていたのだ。
すごく残念がっていたが
「まあ、そこまでお父さんが言うなら・・・。結婚式のお金なら援助できるのにねえ。」
「甘えさせるな。なんとかするだろう。いざというときに親は出せばいいんだ。」
と、父はかっこよく決めた。