次の日の昼休み、響子は麻子と職場の控室でお弁当を食べていた。
突然麻子はスマホの画面を見て、目を見開き、
「響子、シロさん今日中洲にいるんだって!」
と叫んだ。
「え、シロさんってあの芸能人も通うっていう占い師?」
「そうそう行ってみようよ。」
シロさんは、福岡市内で有名な占い師であるが、日によって営業場所を変えるため、Twitterでチェックしないとたどり着けない。
「中洲のどこよ。」
「それが、今日はなりこママのバーと同じビルのカフェバーだって。」
「ええー。すぐ予約しよ!」
シロさんにDMを送らねば。
名前と希望時間を書いて送るだけだ。
響子も麻子も素早くフリック入力し、送信した。
しばらくして響子に先に返信が来た。
「1930お待ちしてます。
30分5000円です。
よろしくお願い申し上げます。」
「取れたよ。麻子は?」
「あ、私も来た。私は20時から。響子の次だね。」
「じゃあバーに行って順番待ってようよ。終わったらバーに戻って少し飲んで帰ろ。」
「オケ!」
占いが嫌いな女子っているのだろうか?
響子は麻子と何を占ってもらうか、ヒソヒソ話しながら、カウンターに戻っていった。
小久保が
「楽しそうだね。」
と声をかける。
「あ、小久保さん、お疲れ様です。」
響子はニコッと笑って会釈をした。
「ああ、和田さん、ちょっとこれ、お願い。」
小久保は響子を呼び止めて通帳を渡した。
「ごめん、通帳繰越しておいてくれる?終わったら袋に入れて俺の机の上に置いてていいから。今から外に出るんでよろしく。」
小久保は時計をチラッと見て、バタバタと外へ出て行った。
「繰越なんて、繰越機でやればいいのに。」
響子は不思議だった。
麻子は、たぶん小久保がちゃんと貯金をしていることを響子にアピールしたいんだろうと思い、まあまあ、やってあげなさいよと言って席に着かせた。
しかし残念ながら、響子は小久保の通帳の中身など全く関心もなく、淡々と繰越をして、古い通帳と新しい通帳を袋に入れ、小久保の席にそっと置いた。