裕二は不思議そうに聞いた。
「もし、今の会社辞めた時に失業保険が出るの、いつからだと思う?」
「辞めたらすぐ出るんじゃないんですか?」
「自己都合退職の時は、もらえるまでの期間が3ヶ月ほどあるの。」
「えっそんなに。その間何にも収入がないって厳しいですよね。」
「だからよ。大体3ヶ月分の生活費があれば何とか食いつなげるでしょう。」
「なるほど。多分やめませんけど(笑)」
でもいつ何が起こるかわからない時代だ。
いざと言うときのお金は持ってなければならないなと裕二は思った。
「となると、給料の3ヶ月分+結納金で160万円は貯めないといけないですね。」
裕二は遠い目をした。
「まぁ、千里の道も一歩から。少しずつ貯めればいいわ。それぐらい現金が貯まったら、次は少し投資を始めてもいいかもね。」
「投資ですか。そんなお金はないですよ(笑)」
「まぁその時が来たらいろいろ教えるわ。まずは現金を貯めることね。」
ママは笑った。
「私、投資やってるわよ。」
裕二は金曜日、響子と会ってママとの話をすると、響子はちょっと自慢気に言った。
「つみたてNISAとiDeCoでね。」
「なにそれ。」
裕二は聞きなれない言葉だったので、思わず聞き返した。
「銀行で投資信託も売らなきゃいけないから、自分でも試しにやってみようと思って。だけど銀行の投資信託は手数料高いから、こっそりネット証券で口座を開いてやってるの。」
「何を言っているのかよくわからないけど、さすがだな。」
裕二はますます響子を尊敬した。
「今度そのことを詳しく教えてよ。」
「ふふ、だって現金を貯めるのが先でしょう。」
「うん、とりあえず100万円貯まったら響子ちゃんに伝えたいことがあるんだ。」
「えっ何だろう。早く聞きたいな。」
響子はにこにこ笑った。