「わかります?ブライトリングです。
うちの営業所のマネージャーがしてるのを見て、自分も欲しくなってつい。かっこいいんですよ。」
「あーあのイケメンマネージャーね。」
ママは、ロードスターを買った時に接客してくれたマネージャーを思い出していた。
確かにスーツもパリッとしていたし、持ち物もよさげだった。
だからって、持ち物を真似してもモテるわけでもあるまいし。
しかし、そのお金はどこから?
「どうやって買ったの。」
「もちろんキャッシングで。」
「ええ?」
ママと松田さんは同時に声を上げた。
「いやまあ。」
裕二は頭をかいた。
「それ、いつ買ったの。」
「えーっと去年の冬かな。ボーナスで返しましたよ。」
裕二は胸を張る。
そこは胸を張ってイバるところではない。
ママは呆れた。
なぜキャッシングなのか。
なぜせめてボーナスが出るまで待てないのか?
ボーナスは赤字穴埋めで使い果たしているのではないのか?
様々な疑問が湧き出てくる。
「もしかしてクレジットカード持ってないの?」
「あ、会社のやつ持ってます。クレジットカードって怖いですよね、使いすぎると。
リボ払いとかいう払い方の方がよかったのかな。
あれってポイントがもらえてお得なんでしょ。」
裕二が笑う。知らないとはなんと恐ろしいことだろう。
クレジットカードの使い過ぎを恐れるあまり、キャッシングに走るとは。
そしてリボ払いをお得だと思っているとは。
しかし、リボ払いを選択してなくて本当に不幸中の幸い・・・。
「なんか、お金貯まらない気がしてきたわ。」
「えっそんな。貯まらないと困るんです。」
裕二に心底お金が貯まらないと困る、という意識づけはできた。
しかし、どこから何に手をつけたらよいのか、一旦整理しなければ。