「ママは高いな。さすがやな。」
松田さんはウィスキーを飲みながら言った。
ママは真顔になって
「私の友人で、結納金が少ないことが原因で破談になった人がいるから、気をつけないとね。」
と脅す。そういうものなのか。しかし、結納だけで100万とすると、いったい全部でいくらかかるのか。
「ようやく目標らしきものが見えてきたわね。」
「おお、いよいよ目標とネガティブ回避やな。」
裕二はママと松田さんが何を言っているのかわからなかった。
ママは婚活についての女性の考え方を説明し始めた。
「いい?女性はどんな人と結婚したいと思う?」
「え、好きな人じゃないんですか。」
ママと松田さんは顔を見合わせ、笑った。何がおかしいのだろう。
ママは、またホワイトボードのメニューをさっと消し、なにやら書き始めた。
「婚活女性の最優先は何だと思う?」
ママはマトリックスの図を描いて一番右上に何が来るのかを裕二に聞いた。
「さ、さあ。」
ママは縦軸にさっと「経済力高」「経済力低」と書いた。
「・・・お金ですか?夢も希望もないですね。」
「だって現実だから。ね、松田さん。」
「そうやなあ。金なかったらママもここで飲ませてくれんやろうし。」
話が違う方向に行きそうだったので
「他には?」
と裕二は聞いた。
「そりゃ話していて楽しい、気の合う人よね。だいたい価値観の合う人、という言い方をするけど。イケメンだったらなおよし。」
ママは横軸に「価値観が合う」と書き足した。おまけで右上にイケメンと付け足した。
「でもそんないい条件の人はすぐかっさらわれるから、最優先は経済力なのよ。」
そうなんだ・・・キビシイ現実を見せつけられた気がした。
今は楽しく付き合っているけど、結婚となると、僕は候補から外れてしまう。お金が全くない。
「どうしたらいいんですか。」
裕二はすがるような眼でママを見た。
ママは
「スマホにGooglekeep入れてる?」
と言った。
「ああ、はい。あまり使っていませんが。」
裕二はスマホを取り出した。
「今、どうしたらいいんですか、と言ったわよね。どうしたらいいと思う?自分で考えなさい。Googlekeepに書いてみて。」
どうしたら・・・裕二は少し考えて「お金を貯める」と入力した。
「じゃ、それが叶わなかったらどうなるの。」
どうなるって・・・響子ちゃんに呆れられて・・・。
「響子ちゃんと結婚できない」
裕二は震えながらフリック入力した。