しばらくシロさんはパソコンでホロスコープを確認し、何やら生年月日を書いた紙にメモを書き込んだ。
「ふーん、彼は愛情が深い人ね。好きな人から嫌われないように極端なことをしそうだわ。」
「え、例えば?」
「うーん、彼、なんか悩みあるの?」
「悩みですか?さあ。ただ、最近お金を貯めると言ってました。」
響子は裕二がお金を貯めると言い出したのは、単にママに怒られたからだと思っていた。
その目標の裏に、裕二にお金がないと響子に振られるという切羽詰まるネガティブな思いがあることを響子はまだ知らない。
「彼、なんでお金を貯めるなんて言い出すと思う?」
「あ、あのバーなりこのママに叱られて、貯める決意をしたようです。」
「ママが?なるほど。」
シロさんは少し間を置き、
「彼はあなたに本気だわね。だからお金を貯めるって言い出したのよ。」
「なんでですか?」
響子はさっぱりわからない。
「あなた、金融関係のお仕事でしょう?」
「なんでわかるんですか?はい、銀行です。すごい。」
やっぱり。
お金を支払う時、きれいなお札で、しかも紙幣の顔を揃えて相手に向けて出していた。
しかも渡す前の、千円札5枚数えるときの指のさばきで、銀行の方だと確信した。
まあ、そんな種明かしはわざわざ言わないけどね、とシロさんは心の中で呟いて
「あなたがきちんとしてるから、彼は、だらしないと捨てられるという危機感があるのよ。お金を貯めるためにご飯を抜くとか、極端なことをやりかねないからうまくアドバイスしてあげたら。」
「は、はい。」
「あなた、モテるわね。」
「そんなことないです。」
響子は焦って手を横に振る。
「そう?今もアプローチされてるように思うけど、まあ、今の彼とは相性はいいから、安心して付き合ったら?」
「はい、ありがとうございます。」
そろそろお時間です、と、店員が声をかけてきた。
もう30分!早い。
ありがとうございました、と言って響子は席を立った。麻子が店に到着していた。
バーで待ってるね、と麻子に声をかけて、響子はバーに戻った。