久しぶりに「小説」を読む。「夏物語」 川上未映子著
こんなに分厚い単行本、通勤列車で持ち運ぶのも重い。(540ページ越え)
夏休みのお楽しみで一気に読みました。読了に2日で5~6時間かかったかな。
主人公夏子の家が超絶貧乏で、父親がだらしなくて、しまいにはいなくなる。
借金取りが来るので夜逃げ。
めちゃくちゃな家庭環境である。
でも日本のどこかに、このような家庭が少なからずあるのだ。
私は本題に入る前の第一章から、ずーんと落ち込みながら読んだ。
最初、この章はいらないんじゃないの?と思ったが、この夜逃げする前のアパートが最後のほうでつながる。
夏子、キャバレーで皿洗いしながら読書して、えらいね。
その読書が、夏子の職業の血肉となったに違いない。
本は読まなければ、思考しなければならないな。
そう、夏子は小説家になるために上京し、ついに本を出し、それが売れた。
読みながら、うわ、良かったねと思った。
そして夏子の才能を認めてくれている編集者にも出会い、その編集者が誘った朗読会で游佐というシングルマザーの小説家と繋がる。
夏子のおねえさんの豊胸話、その子供が口を利かない、お姉さんが勤めるスナックの外国人の同僚、バイトの女性、まだ中学生なのに歳ごまかして働いている、その家庭環境。
出てくる女性がすべて、今日本で問題になっていることが凝縮されていて、痛かった。
夫が病気で、夫の実家に戻らねばならない夏子の元バイト先の女性。稼ぐ力がない女性の悲哀も。
ただの夜のお供付きの労働者(もっとすごい言葉で表現されていたけど)にならざるを得ない。
でもこれは自分で生きていく収入のない妻がどんな思いで生きているのか、表現している。
そうであるならば、男なんか横にいなくてよい。
精子だけもらえればよい。夏子は精子バンクに登録したり、提供者に会ったり(超気持ち悪い人として描かれていた・・・)模索する中でAIDで生まれた逢沢に出会う。
逢沢は戸籍上の父親がいるのだが、子どもができないため、匿名の精子提供で母が妊娠したことを祖母に明かされ、自分のアイデンティティを見失う。
自分の半分がだれの血かわからない違和感・・・。
子どもは自身が望んで生まれるわけではない。
この世に子どもを生み出さないことが子どものためなのでは?ただ子どもに会いたいから産むというのはエゴだ。
私は、自分の子どもを見てみたい、会ってみたいと思って産みました。
退院して、息子を横に寝させ、私も横になりながら、この子の面倒をずっとみなければならないのか。
死ぬまで責任を負わなければならないのか、とんでもないことになったと空恐ろしい気持ちになった。
もちろんかわいくて仕方なくて育てましたが、最初なぜかそんなことを思ったことを思い出しました。
最後は、よかったねで終わるのですが、男性が読んだら最後まで読み切れるのか、ちょっと想像できない。