使う喜びがわかるからこそ、貯めようとがんばれるのかも。
何事もバランスが大事なんだな。
「ああ、シロさんが言っている意味がわかりました。」
響子はつぶやいた。
「シロさん、何か言っていたの?」
ママが尋ねた。
「はい、彼はお金を貯めるために極端なことをするから、よく見ててねと。貯めるばかりに意識が行き過ぎることを心配されたのかも。」
「そうね、例えば収入の2割貯金できれば、あとは全部使っていいのよ。」
「全部ですか。」
「そう、2割貯めてるからあとは安心して使えるでしょ。自分の楽しみや自分への投資のために使っていいのよ。」
貯めるばかりが能じゃないってことか。貯めながら使う。なんだか楽しくなってきた。
「ただいま~。」
麻子が戻ってきた。
「お帰り。どうだった?」
「うん、好きなら好きっていえばいいじゃないだって。」
「えっ好きな人いるの?」
「うん・・・。」
麻子は元気がない。麻子が好きな人って誰なんだろう。
「まあ、小久保さんはじきに和田さんのことあきらめるから、もう少し待って告白ね。」
ママが言うと、麻子はなんでわかるの?という顔をしてママを見た。
「ええ?麻子、小久保さんが好きなの?」
響子はびっくりして麻子に聞いた。
「え、ええまあ。」
そして、小久保さんは和田さんをあきらめるってどういうこと?
「小久保さんは和田さんが好きなのよ。」
「えええ?」
響子は驚いてばかりだ。なんでわからないんだろう。
「あの、私は・・・。」
「わかってるよ。響子は小久保さんのこと、何とも思ってないもんね。」
麻子はため息をつきながら言った。
「モヒート、お願いします。」
響子は、シロさんにモテるわねと言われたのが、小久保先輩のことだったのかとやっとわかった。