貯金に目覚めた彼
裕二は、バーを出たあと、コンビニに寄るのをやめて家に帰った。
買い置きのカップ麺をすすりながら、Google keepに書いた、
お金を貯める
そしてその目標が叶わなかったら
響子ちゃんと結婚できない
というこの3行のメモをずっと眺めていた。
そうだ、この目標の下に、支出をメモしていこう。
いやでも目標が目に入るし。
金額などのメモは音声入力すれば楽だと響子ちゃんが教えてくれた。
さらに家計簿アプリもいいよと教えてもらったが、口座を連携させるのが超面倒だったのでやめた。
とにかく1か月支出をメモして、どこが削れるかを考えよう。だいたい目星はついてるけど…。
と、そのときLINEの通知音。同期の井口だ。
「明日飲みに行くか」
明日は響子ちゃんに今日のバーでのやりとりを報告する予定なので忙しい。
「すまん、明日は先約が」
「そうか、じゃまたな」
あっけなくトークは終わる。
今までは平日飲みに行くなんて、同じ平日休みの同期くらいしかなかったので、誘われたら行く感じだった。
違う営業所なので、地域によって車の売れ方が違うのが面白い。
裕二の営業所は福岡市のベッドタウンなので、福岡市に通勤する一戸建てのサラリーマンのお客様が多い。
そのためファミリーカーが良く売れる。
井口の営業所は、湾岸地域が近いため、輸送や工場関係者が多く、独身や単身者が多いのかコンパクトカーが良く売れる。
それぞれの営業所の話をしながら、情報交換をするのが楽しかった。
この飲み会は削れないけれど、回数は減らすことができるかもな、と裕二は思った。
裕二は、次の日の夕方、響子と待ち合わせのkitte博多のスタバで昨日のママとのやり取りを話した。
目標としてお金を貯める、ということは話した。
ただし、その目標が達成できないと響子ちゃんと結婚できないというところまではもちろん話していない。
「へえ。ママはPDCAサイクルを回せと言っていたのね。大きな目標のために具体的な行動の目標を立てて、チェックする・・・。
結局お金を貯めるって魔法はないんだ・・・。先取り貯金をして、支出を見直す。王道だわ。」
銀行員の響子は、感心してため息をついた。
「でもさ、削る支出を洗い出さないと、積立額を増やしてもまたキャッシングしそう。だからママは1か月の支出を記録しろと言っていたんだよな。」
裕二はママの言葉を思い出しながら話した。
響子は、ママのアドバイスがしっかり裕二に伝わっている様子に嬉しくなった。