響子も、まじまじとホワイトボードを見た。
特に目立った買い物はしていないのに、生活するだけでこんなにかかるものなの?
響子は大学も就職してからも、自宅通勤なのでピンとこない。
裕二はまだ25歳だから手取りは20万そこそこでは。
貯金なんてまったくしてない、いやできないだろう。
だいたい、コンビニだけで45000円も使って、さらに食費30000円って何だろ。これって外食費?飲み会?
響子がホワイトボードにくぎ付けなのがわかり、裕二はさすがにまずいかも、と思った。
そのとき、バーのドアがカランと開いた。
「いらっしゃいませ。」
松田さんだ。
「お、この前の、え~っと。」
松田さんは響子の苗字は思い出せない。
「ほら、21。」
ママが言うと
「ああ、和田、和田さんね。」
と松田は笑って答えた。
「21って何ですか。」
響子は全くわからない。
「背番号よ、和田の。」
ああ、と裕二は思った。さすがホークスファン。
しかし、わざわざ背番号で教えなくても・・・。そして、話の続きをしようと、
「我ながらコンビニに使うお金が多いですね。」
と裕二は答えた。コンビニには1日3回くらいは行ってるなあ。
出先でトイレを借りたらやっぱり買うし。いや、休みでも今日は3回行ってるし。
「そうね、まずコンビニに使うお金を減らさないと。冨田さんはコンビニでは現金?それともスマホで払っているの?」
「ペイペイが多いですね。ナナコとかも。あちこち使っています。」
「じゃ、ペイペイ1択にしなさい。そして、給料がでたら40000円チャージね。他のアプリは使わない。」
「えっ最初にですか。そして40000円ですか。あとの5000円は?」
「給与口座から積み立ての手続きをしなさい。」
「ええっ。」
裕二は、面倒くさいという顔をした。
「冨田さんの給与口座、どこ。」
響子が尋ねた。
「ふくぎん」
「じゃ、ネットで手続きできるわよ。」
響子が、さくさくスマホを検索しながら言う。
「和田さん、手伝ってあげて。で、もう一つ宿題。」
裕二がまだなんかあるの、という顔をした。
「難しくないわよ。積み立ての設定が終わって、月末くらいになったらまた来てね。今度はお一人で。」
「一人でですか。」
デートでなくて、ここに一人で?
「そう、お金が貯まる魔法の方法をこっそり教えてあげる。」
「あ、はい、では月末の週にでも。」